成蹊医会NEWS

歯もカラダの一部である〜成蹊医会を通じ医科歯科のさらなる連携を

高島智仁 (高 35)

 現場の歯科臨床医を何年も続けて思うのだが、医科と歯科がこれまで 以上に連携を強化することができれば、もしかしたら、主に不定愁訴に 代表される慢性疾患で悩む多くの方たちの病状をこれまで以上に軽減出 来るのではないか、と常日ごろ考えている。もちろんすべてがすべてで はない。オペや高度医療治療が必要な場合は当然ながら除外される。takasi

 ごく一般的な歯科治療においても、例えば抜歯行為やインプラント処 置などの歯科分野における外科処置においても、内科医との連携を深め ることにより偶発症のリスクを最低限にまで抑え安全に処置をおこなえ ることができる。最近では種類は限定されるが骨粗鬆症薬を服用中であったがために抜 歯後重篤な状況になってしまった、という事例が発生しこれは大きな話 題となった。
歯科用局所麻酔薬は血管収縮剤が含まれる劇薬で場合により血圧モニ ターや「血液をさらさらにするお薬」も事前の問診で知りえていなけれ ばばらない情報であり、糖尿病に関しては術後感染防止処置なども歯科 医が責任を持って対応しなければならない。また緊急時の高度医療機関 への滞りない連絡体制も事前に備えておかなければならない。歯科商業誌を拝読すれば歯科処置後の死亡事例は決して珍しいことで はないのも残念ながら事実である。

 そもそも我が国では医科と歯科を同じ土俵で考えるといったこと自体 がナンセンスである。医科と歯科が互いを切り離し深い連携も持たずそ れぞれ独立、発展してきた歴史的背景を考えれば仕方がないことである。
  しかしお互いそれぞれの最終目的は、専門の対象臓器、器官は異なる ものの病に苦しむ人体に対して治療を行い健康な状態へ導くこと、であ りこれは医科も歯科も共通しているものと考えている。そのためにも医 科も歯科も連携を深めお互いが協力できる環境ができればよいと考えて いる。
  これにより行き場を失った患者さんに治療選択肢の1つを示す ことができるのであればそれは患者さんに治癒への希望の光を与えるも のではないであろうか。

 歯科に対する一般的なイメージは歯を抜く、削る、詰める、被せる、 など狭き口腔内の「歯に始まり歯に終わる治療」であるが臨床の現場で はこれらの他に身体との関連をうかがわせる様々な事例に遭遇すること はよくある。
  最初の頃は不思議と思っていたが、経験を重ねてきた今ではそれは不 思議なことではなく、しごく当然のことであると自分なりに受け止める ことが出来きてきた。
  おおまかではあるが、目的をもった歯科治療後、俗に言うところの不 定愁訴(頭痛、肩こり、腰痛など)が改善もしくはほぼ解消された症例 には良く出会う。他にも視力や聴力、鼻症状などの顎顔面領域から不妊 症の改善にも良く出会う。これらは実際に私が経験している。
  もちろんこれらの作用機序がどのようなものであるかは明白なことは 不明である。エビデンスは確立されていない。今後も難解過ぎていつま でも確立されないであろう。
  ただ言えるのはヒトは重力の影響を想像以上に受け二足歩行をし、神 経系中枢が低位より構造上頭部という高位に存在させるがゆえに非常に 不安定な状態となり、頭位の傾きにより咀嚼や嚥下時などの咬合時に視 床下部への刺激も不安定になりやすく、また重い頭部を支える筋肉群や 仙腸関節までを含む背骨、つまり姿勢に影響されやすい生物であると考 えている。頭部を安し支えるために最も重要なのが咬合位である。咬 合位を決めるのは歯の存在ある。これが大きく左右するものと考えて いる。

 歯科に訪れるほぼ全員は歯科以外の身体の症状は切り離して考えてい る「歯がずきずき痛い!」と言って来院する患者さんが大部分である。
  ほとんどの歯科医も同様である。歯科領域以外の病状の把握はこちら からアプローチしないと最後まで不明な点が多い。また話したがらない 場合も多い。
  目的をもった歯科治療が進むにつれ、歯科医との信頼関係が築き上げ られてくると「実は〜」という場合も多いが、そのころには目的を持っ ていない通常の、ごく一般的な歯科治療がほぼ終了の段階にかかってい るので最初からやり直すことも出来ずそのまま終了してしまうことも残 念ながら多い。
  歯科医側にも歯科領域以外はまったく情報に興味ないといった態度で あればいつまでたっても歯科以外の情報は入手できない。まずは歯科医 側の考え方も少しは改める必要があると考える。

 歯や舌などを含む口腔は消化器官の入り口であり、食べ物を口腔内に 取り込み 咀嚼させ、唾液と混ぜあわせ嚥下。胃や腸で分解、消 化、吸収させ人体に必要な栄養素を取り入れる。そのなかでも歯はとく に大切な器官である。
  野生動物は歯がなくなれば それはすなわち死を意味する。ヒトの場 合は歯が無くなってもそれは死を意味するということはないが、ヒトが ヒトとして健康的に日常を送るうえで歯はこの上なく大切な器官であ る。それは単に咀嚼器官という狭義の枠を超えるところが多々あると私 は考える。
  「噛めば噛むほど脳に刺激が行き認知症の防止になる。」
  「唾液には消化を良くする作用があり、さらに抗がん作用も含まれ る。」
  「歯周病は心臓病や糖尿病、がんなどの病因のひとつ。シンドローム (症候群)である。」
  「口腔内を清潔にすることが肺炎、特に誤嚥性肺炎を予防するうえで とても大切である。」
  「同じ栄養価を点滴摂取する場合と経口摂取するのとでは、その吸収 に大きく差が出る。」
  これだけでも歯科はカラダは非常に関連性が高いと思われる。
  「今わたしは心臓の治療を受けています。アテローム型の心筋梗塞や 脳梗塞にならないか心配です。予防のために歯垢や歯石を取ってもらい に来た。」
  「おじいさんが最近認知症気味です。おじいさんの入れ歯はちゃんと 噛んでるか診て欲しいので来た。」
  「最近血糖値が高めです。歯石が付いていれば取ってほしいので来 た。」
  「おばあさんの誤嚥性肺炎が心配なのでブラッシング指導を受けに来 た。」
  さらに「最近肩こりがひどい。」
  「頭痛がひどい。」
  「腰痛がひどくて。」
といった主訴が将来歯科医院受診の動機として珍しいことではない時代 がきてほしいと私は考えている。
  私自身、日頃から薬やさまざまな不定愁訴の改善の治療方法のほかに 歯のことも考えられることを患者さんに機会があれば提案している。

 私はカラダの治療や健康を保つための選択肢の1つとして歯科 も参加協力する「歯科医院受診」が自然に挙げられる時代がきてほしい と思っている。もちろん「歯を治したからなんでもかんでもすべてきれ いに治る」ということではなく「その疾病に対する選択肢の1つ に歯科も」という位置づけである。全身を見据えた歯科医の咬合調整が 一般的になる社会の到来を望んでいる。

 「あ〜手がしびれるんですね、一応検査しましょう。」
  「検査しましたが特別これといったところはないです。一応クスリを 出しておきますが歯医者さんにも行かれてください。」と自然と口に出 てくるメディカルドクターが多くなる時代。
  「最近皮膚の状態がいいですね あれほどひどかったのがかなりよく なってる こちらでも塗り薬はお渡しますが歯医者さんも継続して通わ れて下さい。」
  「お二人とも検査に異常はないです。もちろん私の方でも不妊治療は 継続しますが、並行されて歯医者さんで噛み合わせをみてもらってくだ さい。」
  整体やカイロで「それじゃ今日はこれで終わりです。ご自宅へ帰るま えに歯医者さんで噛み合わせをみてもらってください。」
  鍼灸で「針が入って行かないほど筋肉が鉄板のようになってます。こ れじゃどうにもならないので一度歯医者さんに行ってきて下さい。」

 日本の医療費はやれパンク寸前だとか破滅直前だとかこれらを理由に 医療費高騰を抑えるためあの手この手の「削れ!削れ!」の大合唱の 中、このような医科ー歯科が連携を今よりもさらに深めることができる 時代が来れば、もしかしたら国が目指すところの医療費の削減にもつな がるかもしれません。

 咬合不調のある方は身体の不調、とくに不定愁訴も患っている場合が 多いと思われる。特に智歯が萌出している場合やCやP、 Perなど状態の歯を放置している場合はなおさらである。上記理由から も早期に治療するべきである。
  歯も身体の一部である。歯もチューンアップしてあげることが身体に とても大切なことであると考えている。

 医科ー歯科のより深くも身近な連携のためには、最も身近な出身大学 の同窓もしくは所属医師会、所属歯科医師会は当然ながら医科別もしく は歯科別の集まりであるのでお互いのそれ以上の交流発展は難いと思わ れるが、成医会では医科と歯科の集まりであるので医科は医科、歯科 は歯科といった垣根を越え、お互いに情報交換、更には自分の活躍する 地域における連携へと発展が期待できる可能性を持つと期待し今まで以 上に深い交流を望みます。

 この分野は様々な意味でデリケートな分野でもあります。概念も難解 です。
  歯科の先生、医科の先生でご興味のある先生方がいらっしゃいました らお気軽にご連絡下さい。

 



 

医療と品質管理について

医療法人財団 利定会 大久野病院
進藤 幸雄 (高校35期)p2p1

高校35期の進藤幸雄です。近年、安全で質の高い医療への社会的要求はますます高まっていますが、一方で高度化、複雑化が加速度的に進んでいる医療の現実もあり、医療者個人の技量で医療の質を保証することは極めて困難な状況となってきています。
そんな中で、我々は、医療における質中心経営管理システムを研究している研究会、QMS-H(Quality centered Management System for Healthcare)研究会に病院として参加しているので、そこで得た知見から、医療の質に関しての考え方の一部などをご紹介したいと思います。
QMS-H研究会は東京大学医療社会システム工学、飯塚悦功教授、水流聡子教授、早稲田大学理工学術院、棟近雅彦教授ら、品質管理に於いて正に日本の中核を担っておられる先生方を中心とし、医療の質を中心に据えた質中心経営管理システムを開発し、それを医療機関に導入するための合理的なプロセスの確立を目指して活動しており、現在全国から8病院が参加し、2ヶ月に一回の研究会で成果の発表や議論をしています。
そもそも、我々がこの研究会に参加した理由の一つは、医療安全に関心を持ち、また医療安全に対する社会的要求の高まりを感じていたからでした。1999年に横浜市大病院で発生した患者取り違え事件などの医療事故は全国に大きく報道され、医療事故を犯罪のように扱う報道に、国民の医療に対する信頼は一気に失墜しました。更に2001年9月に下った横浜私大事件に対する横浜地裁の第一審判決は、手術室で患者を引き渡された看護師に対して禁固1年、執行猶予3年という、不安を抱えながら診療している我々医療従事者を更に谷底に突き落とすがごとくの判決でした。この事件を境に医療訴訟は約3倍に増加したとのことです。大切な家族や自分自身の体を預ける患者さんや御家族も不安感は募ったことでしょうが、我々医療従事者もうっかりミスが刑事罰になるという不安感や、医療不信の患者の厳しい目に日々晒されながら診療しなければならず、場合によっては萎縮医療が生じるようになりました。
このような医療不信の渦巻くなかでは、間違えを起こさないよう細心の注意を払うことは勿論ですが、間違えの起こりえない仕組みを作ることが急務であり、また間違えを起こさないために高度な仕組みを持っているのだと患者さん達に示すことによって信頼を回復し、更には、我々自身正しい質の高いことをやっているということを確認し、医療従事者が自信を回復できる仕組みが必要であると考えられました。
この研究会に参加し始めたころ、品質管理を専門的に研究している研究者のいうところの質という概念には少なからぬ衝撃を受けました。
品質について深く考えたことの無かった私は、医療の質とは、漠然と、医学知識や技術のことであろうと考えていました。質が高いとは、高度な技術を持ち、知識が豊富なことを言うのであろうと考えていました。それはそれで完全な間違えでもないのでしょうが、実は品質という二文字にはとてつもなく奥深いものがあることを徐々に知らされたのでした。
当初研究会で聞かされた質の概念とは禅問答のようなものでした。医療における製品とは何ですか?製品が何かわからないのに品質か高いかどうかどうやって判断するのですか?などの質問に明確な答えなど用意できるはずもありませんでした。更に、質が高いか低いかは誰が判断しますか?という質問に対して医療従事者のほとんどは、患者さんや御家族は医療に関して深い知識を持ち合わせていないのだから、当然質の判断は医療者にしかできないというように考える、ということを聞かされ、確かにその通りであろうと会心し、何の疑問も湧きませんでした。しかし、それでは自動車の質の良し悪しの判断は自動車に深い知識を持ち合わせているプロにしか判断できませんか?実際には深い知識の無い顧客がしているのではないですか。医療も実はそうなのではないですか?などと話が進んでいくと、何か釈然としないものの、我々の考える医療の質の概念には何か大きな歪みがあるのではないかと考えざるを得なくなったのでした。
研究会参加を重ねてゆくと、特殊だと考えていた医療の世界は実はあまり特殊でもないことも見えてきました。例えば、最も特殊だと考えられている患者の個別性はホテルサービスなどに於ける顧客の個別性と酷似しており、産業界で用いられている様々な質向上の手法は医療業界にも応用が可能であることが理解できます。
品質管理の手法を学び、導入、推進のプロセスを経ていくうちに研究会参加の医療従事者は徐々にその頑なな心を解凍され、質についての考え方を再構築してゆきます。そしていつしか品質管理に深い関心を持ち、その奥深さに魅せられるようになります。ただ、しかし、研究会参加の個人が如何に深く理解してもそれを病院職員全体に浸透させることは困難を極めます。従って、質向上に積極的な人員を中心に仕組みづくりをすることになります。質向上の為最初に手がけなければならないのは、やはり業務手順を書き表す、所謂可視化であると考えます。業務の手順が見えなければどこに問題があるのか見えず、従ってどこを改善したらよいのかが明確になりません。業務が可視化されていないところで行う改善は本当の意味での改善とは生り得ず、応急処置を繰り返すことになり、その結果繁忙な上に効率が悪く更に正確性も欠くという手順に成り果てる可能性があります。実際に当院の業務にもそのような手順が見受けられました。可視化することによって初めて改善活動が開始されたわけです。
また、医療はその高度な専門性故に個人の能力に頼りすぎている傾向があります。弘法も筆の誤り、To err is a humanなどの言葉もありますが、どんなに能力の高い人間もミスは起こします。患者さん個々人に合わせて診療内容を組み立てることは大切ですが、ガイドラインやクリニカルパスのように予め診療内容が示されていれば、不要なミスの軽減につながると考えられます。更には患者さん個々人の状態の変化に合わせて対応可能なクリニカルパスである患者状態適応型パスPCAPS研究会がQMS-H研究会と平行して進行しており、完成すれば医療の質と安全の保証に大きく貢献するものと考えられます。
このような様々な情報を吸収しつつ徐々に院内に品質管理のシステムを導入して行くわけです。参加病院は自院の進捗を発表しつつ、他院のシステムを参考にしながらお互い切磋琢磨しながら質向上に努め、時に懇親を深めています。
皆様の医療機関でも様々な質向上のための取り組みが行われていることとは思いますが、質向上の一つの取り組みとして我々の行っている活動をご報告いたしました。

 

台北を訪れて ―アジア諸国に垣間みる経済活性化を見据えた医療政策―

TAIPEI

かわしま神経内科クリニック 川嶋 乃里子

 当クリニックが参加している新薬国際治験のアジア地域会議があり、4月中旬に台北へ行って参りました。自由時間は少なかったのですが、故宮博物館を半日観光しました。中国の長い歴史を改めて思い知らされると同時に、戦争の最中にこれらのたくさんの展示物を大陸から持ってきた孫文・蒋介石らの偉業?に驚かされました。博物館内は大変混雑しておりました。少し前までは、中国人観光客は中国から台湾TAIPEI2へ直接入国できず、第3国に一度寄らなければならなかったのが、直接入国できるようになったため、大陸からの中国人観光客(団体客)が急増したとのことでした。博物館のお土産品売り場も、人が群がり大変な賑やかさでした。
会議はおもしろいものではありませんでしたが、翌朝、地元の人たちに人気のある朝粥の店へ友人たちと行きました。台湾では、自宅ではなく、このようなお店やTake Outして職場で朝食をとることが多いそうです。豆乳粥の人気があるようで、それにパンのような餅を浸したり、卵の入った餅を添えたりするようでした。写真の店は朝6時からやっているそうです。売っている横で、餅を焼いてしており、なんだか高松の讃岐うどん屋さんに似ていました。

皆様がよくご存じのように、他の先進国ですでに発売され5年以上たっているのに未だ日本では使用認可されない新薬は多数あります。インドではジェネリックとして既に発売されている薬剤でも、日本では個別にPhase 2から治験をするため時間がかかり、国内治験がうまくいかない薬は発売の目途が立ちにくいのが現状です。韓国や台湾などでは、はじめから治験をやり直すのではなく、副作用や容量確認などの簡単な検討後新薬を発売しているそうです。
国際同時治験は新薬開発のスタンダードになりつつあり、他の国と同時に新薬の認可がおりるという点で日本にもメリットがあります。現在当クリニックが参加している2つの治験では、アジアの血液検体はシンガポールの検査センターに集められて検査されます。1つの治験ではインドからFax送信機能付心電計がこちらへ送られてきて、検査結果をインドへ送信します。診察記録などは、開発会社が用意したWeb上のサイトへ書き込みます。
シンガポールには、巨大な検査センターがあり、おそらく国際空港からのアクセスもよいのでしょう。国を挙げて世界中から優秀な研究者を集め、先進的設備と十分な研究費で成果をあげ特許などを増やそうとしています。インドでは、国の政策として、他の国より早くジェネリックを発売できると聞きます。香港には、ジェネリックなどをアジア諸国に配送するための巨大倉庫があるようで、日本で未認可・他国で標準薬をネットなどで買うと香港から送られてきます。フィリピンは国策として看護師・介護士養成に力を入れています。
医療・福祉の技術を国の経済活性化の手段の一つとして考えている他のアジア諸国の政策を垣間見ると、日本では医療保険制度の充実に話が集中しすぎている気がします。長期的でグローバルな視点をもって、どこにお金をかけるべきか多角的に考えるべき時でもありましょう。

2009年4月29日           
 
 

整形外科領域日帰り手術の現状と展望

善衆会病院 群馬スポーツ医学研究所
整形外科  上村民子

高校35期の上村民子です。学会でアリゾナ州フェニックスに来ています。

AANAArthroscopy Association of North America(AANA:北米関節鏡学会)という学会に参加していて、すばり、これが私の専門とする領域です。もちろん整形外科医なのですが、主に膝半月板、靭帯損傷、軟骨損傷などのスポーツ外傷と変形性膝関節症などにとりくんでいます。
鏡視下手術といえば、低侵襲手術の代表のようなものですが、これが日本だと、未だに何日も入院するような大手術と同等な扱いなのですが、実際には日帰りが可能なものです。
もちろん、米国では半日で退院します。
文化的に“手術=入院”が定着している、日本の医療ではありますが、低侵襲、低コスト(もちろん低人件費)、高QOLを求めて、この5年余りはメインテーマとして日帰り膝関節鏡視下手術の普及に非力ながら力を注いできました。
多くの急性期病院がDPC対策に追われるようになった昨今では、ようやく日帰り膝関節鏡にも出番がくるようになりました。 DPCには医療経済的な背景が存在するものの、これまで日本にはなかった、医療の簡素化を行うと手術もシンプル、入院もシンプルになり、外来部門が充実するためか、自ずと患者側の治療の目的と治療者側の医療の目的が明確になって、相互の理解が深まってきたように思います。
先日、メディカ出版の整形外科看護という看護雑誌から、『整形外科日帰り手術の現状と展望』というタイトルで依頼原稿があり、その一部を抜粋し、この場でご紹介させていただき、多くの先生方の批判に浴したく存じます。

整形外科領域の日帰り手術
近年、整形外科領域の日帰り手術は増加傾向にあるといえますが、その適応はまだ明確にはなっていません。筆者が在籍していた、湘南鎌倉総合病院日帰り手術センターで平成18年1月から12月までに行われた258例の整形外科日帰り手術(DS)では、鏡視下手根管開放術が外来手術の22%、膝関節鏡視下手術がDSの67.2%を占め、双方の手術は全体の43.4%を占めました。関節鏡を使用した手術は低侵襲で、整形外科領域の日帰り手術の進歩に寄与したことはいうまでもありません。また、麻酔法の工夫やリカバリーに関する研究も進歩し、これまで入院を必要としていた、観血的骨接合術も適応が拡大しています。
DSは、手術侵襲が低いというだけではなく、出血の程度、術後疼痛、感染などが適応を決める判断材料になるかと思います。出血に関しては、ドレッシングの工夫などでコントロールは可能ですが、術後疼痛や感染については、侵襲の大きい手術になればなるほど、コントロールが困難となり得るので、日帰りとはいえ、一泊入院を勧めるのが無難です。とくに骨折の観血的骨接合術(ORIF)では、内固定材料を使用する関係上、疼痛に関しても感染に関しても内服薬や坐薬のみでは対処が困難で、静脈注射を要することもありますので、術後翌日までは点滴を継続しておくことをお勧めしています。

日帰り手術の海外事情−予定手術のほとんどが日帰り手術である、米国の事情について―
米国では下肢手術の一般的な入院期間は人工関節で4日前後、その他はほとんどが日帰りで行われています。この背景には医療経済が日本とは異なること、家庭を中心にしたライフスタイル、自宅にても可能な疼痛管理の工夫、リハビリテーションプロトコールの簡素化などがあげられます。
日帰り手術の適応疾患は、本邦ですでに行われているものに加え、肩関節鏡視下手術、膝関節鏡視下手術のほぼすべてです。筆者が過去に訪れた米国デラウェア州の整形外科日帰り手術センターでは、肩関節、股関節、膝関節の鏡視下手術の大半が全身麻酔で行われていました。特に疼痛管理が難しい膝前十字靭帯再建術については、患肢のアイシングシステムのレンタル、術後に創部への局麻薬の注射などを行っています。術後はリカバリーから帰宅待機までの間の点滴以外は、すべて内服で、抗生剤、麻薬を含む消炎鎮痛剤が処方されます。創部はステリストリップで固定されていますので、術後2-3日でシャワーを許可し、術後3日−1週間めに外来を受診させます。
術前にリハビリテーションのプロトコールを患者に理解させ、リハビリテーションは主治医の整形外科クリニックから依頼されたリハビリテーションクリニックで行われます。
手術は初診から術後の機能回復までが全て外来ベースで流れており、患者側も手術を入院しないで行うことに何の抵抗もないことが、患者中心の術後管理を容易にしています。患者教育は、医師、看護師、理学療法士のそれぞれが術前から関わって積極的に行われ、この充実こそが米国の日帰り手術の確立を後押しをしたとも言えます。
本邦でも術前からの各職種の積極的な関わりが課題であると思われ、手術を受ける側からのニーズを術前から社会復帰にいたるまで反映することが望ましいと考えます。

日帰り手術は今後どうなるか
現在、日帰り手術の中の一部の術式には、短期滞在手術基本料が設定されています。これは、ある一定の施設基準を満たせば、指定された手術に対して、1日から1泊2日に完結した場合に診療報酬を請求できる仕組みになっています。しかし、今年4月の診療報酬改定では、15歳未満の鼠径ヘルニアに関してのみ、一律5670点となりました。これは近い将来導入が予測されるDRG/PPS(Diagnosis Related Group/Prospective Payment System)を見据えての改定と思われます。
すでにDPC(Diagnosis Procedure Combination:急性期入院医療費包括支払い方式)を導入されている施設は国内の急性期病院の半数近くに昇ります。現在は短期滞在手術とDPCは別な算定方法が採用されていますが、いずれの考え方も外来診断機能を向上させて、入院治療をシンプルにするという点で一致しています。
現在はごく限られた術式にのみ採用されている短期滞在手術基本料ですが、表1に示した術式のごとく、すでに実施されて、応用可能な術式は多く、術後リカバリー時間など手術完結までの目安が明確になりつつありますので、適応術式は今後、拡大されることと思われます。
このような本邦の医療経済の動向に合わせて日帰り手術のニーズが高まることは明らかであり、今後は日帰りで手術を行わなくても、DPCにあわせた、入院治療の簡素化という側面から、日帰り手術のノウハウを多くの施設が導入を余儀なくされることとなるでしょう。

今日の時点で、日帰り手術を受ける患者側からのメリットは、仕事や学校の休暇をセーブできること、自宅で快適に過ごせること、入院費がかからないので、経済的な負担が少ないことなどがあり、一方でデメリットとしては過去は入院が常識であった手術を日帰りで受けることへの不安、疼痛、周術期合併症への対処方法などがあげられます。これらのデメリットは患者教育とクリティカルパス、病院の24時間サポート体制などの充実で解消できるものと思われます。
現在でも日帰り手術を施行される施設においてはほとんどがクリティカルパスを導入されていますが、バリアンスの検討を多くの施設で共有化するなどの工夫も今後、日帰り手術をより安全に行い、患者満足度を向上させることができると考えます。

 

 

三鷹市における特定健診・特定保健指導について

三鷹市医師会 会長 角田 徹 (高校25回)

今まで老人保健法によって行われていた基本健康診査が、今年の4月から特定健診・特定保健指導へと大きく変わりました。

まずその実施主体が保険者となりました。今までの基本健診は市区町村が行っていましたが、例えば三鷹市国保の加入者については三鷹市の国保課が健診の実施主体となったのです。65歳以上であっても、それぞれの方が加入している医療保険者(社会保険、組合健保など)がその方とその扶養者の健診・保健指導を行うことが義務化されました。そしてそれぞれの保検者が、特定健診・特定保健指導を行う組織・団体と契約する形となりました。特定健診の対象者は40から74歳までです。75歳以上は、後期高齢者医療制度により、広域連合が健診を行うので特定健診とは別制度となります。


特定健診においては、糖尿病等の生活習慣病、特にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者・予備群を減少させるため、保健指導をするものを効果的に抽出することを目的としています。このため、その健診項目は今までの基本健診の項目と異なります。


身体計測で腹囲が加わること、検査項目ではGOT、GPT、γ-GTP、LDL、HDLコレステロール、TG、空腹時血糖(空腹時血糖が測定できない際はHbA1c)、尿蛋白、尿糖が基本的な項目です。貧血検査や血清クレアチニン、尿潜血は必須項目ではありません。心電図検査、眼底検査、貧血検査は“詳細な健診項目”として前年度の健診所見から医師が必要と判断した場合に行われることになりました。胸部レントゲン検査は含まれておりません。
国の定めた特定健診の項目は上記のごとくですが、昨年までの基本健康診査の内容をレベルダウンすることのないように、各自治体では独自の検査項目としてクレアチニンや尿酸、HbA1c、胸部レントゲン、心電図などを追加している所が多いようです。


特定保健指導の対象者の選定は腹囲の基準(男85cm以上、女90cm以上)にあてはまる場合と、腹囲には当てはまらないもののBMIが25以上の場合が対象です。言い換えれば、その他にいくら異常値があっても、上記に該当しない場合は特定保健指導の対象とはなりません。対象者は、それに加えて血圧、血糖、脂質の基準と喫煙のリスクファクターにいくつ該当するかにより、特定保健指導の階層化が行われます。特定保健指導については、動機づけ支援、積極的支援に分けられますが、それぞれ6ヶ月間に及ぶ指導となります。


三鷹市医師会では特定保健指導も全面的に受託しています。特定健診の結果説明時に現場で特定保健指導の階層化を行い、動機付け、積極的支援に該当した対象者に対して1回目の指導を行います。支援プランも作成し6ヶ月間のスケジュールを説明します。動機づけの場合は6ヶ月後にその成果を往復はがきで答えていただきますが、積極的支援の場合は初回面接後毎月支援レターを送り状況を返信してもらい、その間2回のグループ指導が入ります。初回の指導を現場で行ってもらった後は、医師会から一括して対象者に支援レターを送り、グループ指導も医師会館を使って行っています。


国の示した方法では、特定健診の結果をもとにその保険者が階層化を行い、その結果を対象者に通知することになっています。しかし、これでは特定健診の結果が判明してから特定保健指導が始まるまで最低でも1ヶ月以上かかってしまうので、対象者のモチベーションは下がり、有効な指導ができるとは思えません。

  当医師会の試みはかなり独創的で、その結果はふたを開けてみないと分からない状況です。しかし何回も重ねた市民会議や当会での検討の結果、この方法が最善と信じて開始いたしました。国は今後5年間この制度を続け、その後結果を検証する予定としています。目標値も特定健診受診率、特定保健指導受診率、曳いてはメタボリックシンドロームの減少率などを決めています。国が示した枠組みの中で、各地域がどれだけ有効なそして具体的な方策をとれるか、が問われています。また、機会がありましたら当市での結果をご報告したいと思っております。

 

 

今、日本では、勤務医でもなく開業医でもないパートで働く中堅医師が増えています。私のまわりにも3人おります。かわしま神経内科クリニック 川嶋 乃里子 (高校25回)

<<フリー医師増加中>>

m3.comをすでにお読みになった方も多いと思います。

私が勤務医を辞めたわけ
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/080801_1.html

今、日本では、勤務医でもなく開業医でもないパートで働く中堅医師が増えています。
私のまわりにも3人おります。

そこで、今年4月より常勤の勤務医を辞め、いくつかの病院でパート勤務している40歳代の消化器内科医師(男性)にインタビューしました。

  1. どうしてそのような働き方を選ばれたのですか?
  2. 専門領域に専心するためです。僕の専門は、肝癌などの血管内治療なのですが、総合病院に勤めていると、専門以外の仕事が多すぎる。専門領域の仕事の量は、科によって違う。しかし、総合病院に常勤勤務していると,当直や救急外来をどの医者も同じように義務として行うようにいわれる。40歳を過ぎると、当直明けに血管内治療を行うのは、体力的につらく、仕事の質も下がりがちになるだろうし、合併症などのリスクが増えると思う。専門領域に専心する職場環境を病院管理者側に要求したが、理解されなかった。

現在の日本の勤務医の多くは、雇用契約書もなく働いており、仕事の内容が明快にされていない。これもおかしな話である。
医師の頭数だけそろえれば良い時代ではない。そのようなことでは、患者さんは納得できない筈である。しかし、そのことを病院管理者側は理解していない。

  1. 何故、今フリー医師が増えていると思いますか?
  2. 開業医が増え開業しにくくなったこと、多くの総合病院勤務が中堅医師には過重労働の環境であること、一方で質の高い医療を確保するのに技術のある医師を総合病院は求めていることなどから、現在の状況があるのだろう。

Q. 現在の医療現場に求めることは?問題を感じることは?
A. 1.プライマリケアも救急もともに専門性があり独立させるべきなのに、プライマリケアや救急は誰がやってもよいと多くの病院管理者は考えている。このため、他の専門領域に専心したい医師は荷重労働となる。
2.日本ではチーム医療というと医師同士の横の連携と考えている人が多い。チーム医療とは、ある一人の患者さんに関与する全てのコメデイカルが協力して行うもので、医師だけで何でもする時代ではないと思う。
3.プライマリケア医は、ロールプレイが好きで、研修医を喜ばせているが、本来の患者中心の医療が置き去りにされているように感じることがある。
4.新研修制度のなかで、研修医はいつまでも学生気分で医師としての自覚が育たないように思う。一方で、学生の時、研修1年目と何度も行く先を探すのに時間を費やし本来の仕事に専念しづらいようにもみえる。研修病院は教育スタッフが十分いることはなく(米国とは比較にならない)、研修内容の充実は当分難しい。また、研修病院の教育スタッフは、いかに研修医をうまく集めるかに腐心するように再教育する公的研修に出るように義務づけられている。おかしな話である。
5.医療費の配分の仕方が不適切だ。たくさんの救急医療に対する公的補助金が、夕方から夜間に受診する感冒など軽症の患者に使われている。軽症なのに夜間救急を受診する場合は、本人から医療費を高くとるべきである。

                            文責 川嶋 乃里子 (高校25回)